『Shall we ダンス？
』は1996年に劇場公開され、大ヒットを記録、全国に社交ダンスブームを巻きおこしたほどのハートフルコメディの傑作中の傑作。何よりも、主人公のサラリーマンが男として成長していく姿が美しく、ダンスを通して描かれる人間模様はただただおかしいうえに、当然ながら名言の数々にあふれているのだ。
主演のサラリーマン役は役所広司、その主人公憧れのダンサー役に草刈民代、脇を固めるのは竹中直人、渡辺えり子、田口浩正といった名優たち。劇中での彼らはあまりに魅力的であり、日本を飛び越え海外においても19ヵ国で公開され高い評価を獲得し、ついにはリチャード・ギア主演によるリメイク版がハリウッドで製作されるに至った。これだけの名作をまだ見ていない方は、ぜひ一度ご覧になることをおすすめする。
名言1・・・岸川舞
「なにか？」
電車から見えるとある駅のダンス教室の窓。役所広司演じるしがないサラリーマンの杉山正平は、その窓から黄昏れた表情で外を眺める草刈民代演じる岸川舞に惹かれてしまい、思わずダンス教室に飛び込んでしまう。しかし、期待した岸川舞の素っ気なさは鬼の如しで、レッスン料の高さにしり込みする杉山に、舞は「なにか？」とこの表情。美人はこれだから・・・・・・。
名言2・・・田村たま子
「田村たま子です。おばあちゃんで、がっかりした？」
いかにも優しそうなたま子先生から、杉山は社交ダンスの手ほどきを受けることに。舞からレッスンを受けられるかもと期待していた杉山は落胆を隠せないが、たま子先生は名伯楽で、杉山は日に日にダンスがスキルアップしていく。
名言3・・・高橋豊子
「あの親父なんかさ、もう週に三日も通っちゃって、もうバカにされているのも気づいてないんだからさあ。ハッハッハ、ま、そのうち辞めるだろうけど。あんたもいつまで続くかねえ？ ねえ？」
練習中も舞への下心が出てしまう杉山は、ついつい舞のレッスン風景を食い入る様に見てしまう。教室の常連、渡辺えり子演じる高橋豊子に下心を見透かされ、これぞ皮肉！という見事なまでの皮肉を言われてしまう。でもねえ、美人って見飽きないんだよねえ～。
名言4・・・青木富夫
「うるせえな、欲求不満のデブババアが」
周防作品には欠かせない竹中直人演じる青木富夫のドニー・バーンズ初披露シーン。青木は高橋にかのような暴言（名言）を吐いたため、仲は決定的に最悪のものとなり、被っていたかつらをむしり取られたため、会社の同僚・杉山に素性がバレてしまう。
名言5・・・青木富夫
「社交ダンスをやっているなんて知られたら変態扱いされかねませんからね。気を付けてます。たたでさえ、いい歳してひとりもんで、女目当てだって思われるの当たり前ですから。会社が終わって、かつら被って衣装着て、ドニー・バーンズになるんです。ラテンの世界チャンピオンなんですけどね。それで音楽に乗って体動かしてると、本当に楽しいっていうのか、解放されるっていうのか、ほら、僕、会社で居場所なかったりするから」
周防作品には欠かせない竹中直人演じる青木富夫の鬱屈告白シーン。会社に青木が社交ダンスをやっていることはバレていないが、すでに変わり者の変態扱いはされており、そりゃ居場所もなくなるわといった軽率な言動を繰り返しているご様子。残念！
名言6・・・青木富夫
「あんな若いパートナー初めてだったし、独身だっていうし、チャンスだと思ったんだけどな。あのクソババさえ余計なことしなきゃ。どうせどっかの小金持ちで、暇持て余してホストクラブなんかのつもりで来てんだろ」
舌の根も乾かぬうちに、女目的でダンスをやっていることを自ら吐露してしまった青木の失言的名言。結局青木は、若い女の体に触れたい、若い女を抱きたい、若い女と結婚したいがための下心でダンスに励んでいるのだ。だから高橋への悪口が出る出る。
名言7・・・岸川舞
「あの、こんな言い方失礼かもしれませんが、もしわたしのことが目的でこの教室にいらしてるんでしたら、ちょっと困るんですけど。わたしは真剣にダンスを踊っています。教室はダンスホールじゃありません。不順な気持ちでダンスを踊ってほしくないんです」
レッスン後、勇気を出して舞を食事に誘った杉山であったが、舞の返答は男の沽券も下心も人格も、すべてをズタズタに引き裂くような強烈なものだった。貴方の言っていることはすべて合ってはいますが、だけれどもこれだから美人は・・・・・・という名言。もうちょっとおじさんに優しくしてほしい。
名言8・・・杉山正平
「なるほど、知らぬは本人だけか」
杉山は舞との一件があったものの、逆にそれがますますダンスにのめり込むきっかけとなり、会社の同期でありダンスの先輩である青木と交流を深めていく。見事な姿勢で小便をする杉山に青木はダンス教室通いがバレると注意するが、青木自身、ダンスのクセがバリバリ出てしまうのだった。
名言9・・・青木のパートナー（仮）
「青木さん、普通にお話している時はそうでもないんですけど、気持ち悪いんです、気持ち悪いんです、青木さんの踊り」
青木は、東関東アマチュアスポーツダンス大会に出場するため、ダンスホールでパートナー（仮）とお手合わせをするが、青木の踊りは若い女子には受け入れられなかったようで、最後はキモメン扱いされて関係はご破綻してしまう。暮れる青木なのであった。
名言10・・・杉山正平
「あなたに思い知らせてやろうとしたんです。あなたが目的じゃない、ダンスをするためにここに来てるんだって。でも、でも、そうやってしゃにむに踊ってたら、いつの間にか本当にダンスが好きになってた」
マジメか!? とツッコミを入れたくなるほどマジメな杉山の名言。舞に完膚なきまでに叩きのめされた杉山であったが、ダンスに真剣に取り組むうちにダンスの魅力の虜となり、いつの間にか舞も認めるほどに成長。しがないサラリーマン・杉山が、美人を落とした瞬間だった。中年男性万歳！
名言11・・・青木富夫&高橋豊子
「高橋『何よ、頭ばっかり抑えちゃって！ 踊りがめちゃくちゃだったじゃないの！』
青木『二人がオレの頭狙って邪魔したんだよ』
高橋『そんなに気になるんだったらさ、かつらなんか始めから被んなきゃいいのよ！』
青木『お前にオレの気持ちがわかってたまるかよ！』
高橋『ハゲ親父の気持ちなんかわかるわけないでしょ！』
青木『わかったよ！ 被んなきゃいいんだろ、こんなもん！』」
いよいよ東関東アマチュアスポーツダンス大会当日、青木は因縁の相手マッチョと元パートナーからの妨害を受け、精彩を欠いてしまう。高橋豊子にとがめられた青木は、ヅラを床に叩きつけ素頭で踊ることを決意。それにより隠されていた本来の力が覚醒、気合満点のダンスを披露したのだった。
名言12・・・田村たま子
「かつらを取ってひと皮剥けたのね！」
青木のダンスは見る者の目を見張るものであり、名伯楽・たま子先生も絶賛。横の舞も「すごい！」と驚きを禁じ得なかった。当然ながら審査委員の目にも止まり、青木は一回戦を突破。因縁のマッチョと元パートナーを撃破してみせたのだった。男の真価はひと皮剥けてからということ。
名言13・・・岸川ダンス教室
「Shall we ダンス？ 杉山さん」
杉山は競技会での事故以来、家族に黙ってダンスをしていた罪悪感もあり、社交ダンスを辞めてしまう。しかし、舞は杉山への指導で社交ダンスの原点に立ち戻ることができ、イギリスへと旅立つことを決意。お別れパーティーで杉山とラストダンスすることを切望するものの、杉山は煮え切らない態度に終始してしまう。しかし、電車から岸川ダンス教室の窓を見上げるとそこには・・・・・・。杉山の胸に再び火が灯ったのだった。
名言14・・・岸川舞
「Shall we ダンス？」
いよいよパーティーのラスト、杉山の姿はない。舞は悲しそうな表情を浮かべるが、やっぱり杉山が駆けつけないわけがなかった。舞は杉山とラストダンスを踊り、ハッピーエンドに終わるのだった。これにて『Shall we ダンス？』の名言は完。多くの人が一度は見た作品であると思うが、改めて素晴らしい映画であることを再確認していただきたい。
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