ファイティング原田

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日本人初のボクシング世界チャンピオンに輝いた白井義男。その白井のあと、彗星のごとく現れ、弱冠19歳にしてボクシング世界フライ級チャンピオンとなったファイティング原田の半生から紡がれる名言を、百田尚樹の『「黄金のバンタム」を破った男』から引用し、このページで紹介する。

この『「黄金のバンタム」を破った男』を読めば、いかにファイティング原田氏が偉大なチャンピオンであったかわかっていただけるはず。ファイティング原田氏は、ただの人の良さそうなおじいさんではないのである。

名言1・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 10ページ

ファイティング原田「現在と昔ではボクシングの世界チャンピオンの価値がまったく違う。当時のチャンピオンは世界にわずか八人しかいなかった。つまり八つの階級に、それぞれ一人ずつ王者が君臨していたのだった」

「黄金のバンタム」を破った男「黄金のバンタム」を破った男』はファイティング原田の試合が、当時、いかに国民的関心事であり、国民を熱狂させたのかという記述から始まる。そしてファイティング原田の現役当時は世界チャンピオンはわずかに8人だけ。世界チャンピオンとなるボクサーが、今とは比較にならないほどレベルの高い時代であったのだ。

名言2・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 46~47ページ

ファイティング原田「原田はデビューの時から、ひたすら前へ出てパンチを出すファイターだった。このスタイルは基本的には引退するまで変わらない。アウトボクシングも上手にこなすのだが、原田の本質は打って打って打ちまくるファイタースタイルといえるだろう」

ファイティング原田の人気の一端を表す名言。やっぱりボクシングは人間離れしたハイレベルのしばき合いが楽しいのであって、勝負論と観客論を高次元で融合させたボクシングスタイルのファイティング原田だからこそ、国民的な支持を得られたのだと合点。

名言3・・・たこ八郎 『黄金のバンタムを破った男』 51ページ

たこ八郎「斉藤は客のウケを狙うため相手にわざと打たせ、相手が打ち疲れたところを猛反撃して逆転勝ちするという凄惨な試合をして人気を集めた」

後に「たこ八郎」の芸名で人気芸人となった斉藤清作のファイトスタイル。現代ボクシングではありえないが、1950年代はまだこういったボクシングが行われていた。たこ八郎は才能あるボクサーであったが、パンチドランカー症候群により引退を余儀なくされる。

名言4・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 57ページ

ファイティング原田「俺は素質のある方じゃなかった。だから人の二倍三倍やらないとダメだったんだ。それに、練習が好きだったからね」

柔道の鬼と呼ばれた木村政彦は「三倍努力」と唱え日本柔道史上最強の柔道家にまで上り詰めたというが、ファイティング原田も同じ、人の二倍も三倍も練習に励むことで世界チャンピオンにまで駆け上ったのだ。本当に成功した人って、同じ生き方をしてるんですね。

名言5・・・矢尾板貞雄 『黄金のバンタムを破った男』 108ページ

ノーイメージ「自分で決断したことです。男として後悔したことは一度もありません」
  

白井義男に次いで世界チャンピオンになると目されていた矢尾板貞雄が世界戦を前に突如として引退。ボクシング選手の環境改善を訴えて、志半ばで引退を決意した矢尾板貞雄の後年に語った名言だ。矢尾板氏が世界戦を辞退したことで、ファイティング原田に世界戦のチャンスが回ってくる。

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名言6・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 114ページ

ファイティング原田「あの時は本当に頭に来た。なめやがって! と思ったね。この野郎に絶対に勝ってやると思った」

世界戦の決まったファイティング原田は王者のポーン・キングピッチを羽田空港に迎えに行くも、王者は原田をガン無視。王者のこの行為に原田は一方的にキレるも、これから闘おうというのだからそりゃ無視されるのもしょうがないのでは・・・・・・。

名言7・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 116ページ

ファイティング原田「苦しい練習を積み重ねてきて、それをやっと発散できるんだ。楽しくないはずないじゃないか」

王者のキングピッチには戦前から頭にきていたものの、何よりボクシングが好きな少年だったファイティング原田は試合当日嬉しさが爆発。入場から思わず笑みがこぼれてしまったそう。キレるわ、ニタつくわで、ファイティング原田さんは環状の起伏の激しい方なんですね。

名言8・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 120ページ

ファイティング原田「この試合の原田の『ツー(右ストレート)』は恐ろしく速かった。左ジャブが打たれたと思った次の瞬間には右ストレートが伸びているのだ。言葉にすると、『ワン・ツー』ではなく、『ワ・ツー』という感じだ」

言葉にして「ワ・ツー」は確かに速い。左を突きーの、右を振りーのするワン・ツーが、ワ・ツーと表記されてしまうスピードって・・・・・・。ワ・ツー! ワ・ツー! ワ・ツー! この原田の速い攻撃で、チャンピオンは得意の左ジャブが殺されてしまった。凄いですね、ワ・ツー!

名言9・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 123ページ

ファイティング原田「後に欧米のボクシング評論家から『狂った風車』と呼ばれた鬼気迫るラッシュだ。今日、ビデオで見ても鳥肌が立つほどで、現代のボクサーで、これほど猛烈に打ち続けることができるボクサーがいるとは思えない」

回転力が速く、かつ手数が止まらない「狂った風車」のラッシュで、チャンピオンのポーン・キングピッチをマットに沈め、見事、白井義男以来、日本人として二人目、そして白井がタイトルを失ってから8年ぶりにボクシング世界フライ級チャンピオンに輝いた。それにしても“狂った風車”って・・・・・・凄い!

名言10・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 128ページ

ファイティング原田「ファイティング原田のボクシングスタイルは良くも悪しくも古いボクシングスタイルだ。無尽蔵のスタミナを武器に全ラウンドにわたって打ちまくる。相手は少々テクニックに優っていたとしても、最終的に原田の休むことないラッシュ戦法に屈してしまう」

ファイティング原田のファイトスタイル。いわゆる打って打って打ちまくるということだ。ちなみに著者は、「(現役ボクサーで)どちらかが完全に倒れるまでやらせる昔のルールなら、原田に勝てるボクサーは想像がつかない」と断言。潰しあいに強いって、メキシコ人ボクサーみたいでかっこいいっす。

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名言11・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 133ページ

ファイティング原田「僕は生涯で7回負けている。しかし、バンコクでポーンと戦った試合、それとシドニーでファメションと戦った試合は、今でも僕の勝ちだったと思っている」

ポーン・キングピッチに勝利した3ヵ月後、タイ・バンコクでリターンマッチ。ファイティング原田は15Rにわたって圧倒するも、ボクシングの悪しき慣習・ホームタウンディシジョンにより負けとなる。原田は後にオーストラリアでも負けにされたことがあるのだが、いまだに悔しさをにじませてしまう負けず嫌いな性格が、原田を世界一流のボクサーにまで成長させたといっても過言ではない。

名言12・・・海老原博幸 『黄金のバンタムを破った男』 138ページ

海老原博幸「海老原が試合中に指を骨折したのは七度。しかし彼はただの一度も試合を放棄していない。KO負けもなければ、レフェリーにストップされたこともない。まさに『死ぬまでやる』ボクサーだった。タウンゼントが『ほんとのガッツ』と称える所以だ」

ファイティング原田のライバルにして親友の海老原博幸も、原田をリターンマッチで下したポーン・キングピッチに1RKOで勝利し、世界チャンピオンに輝いている。海老原のパンチ力は群を抜いており、相手をKOするどころか自身の拳が耐え切れず幾度も骨折してしまうのだった。凄い!

名言13・・・ 『黄金のバンタムを破った男』 159ページ

ノーイメージ「近年、日本人ボクサーと一度も戦わないで『チャンピオン決定戦』に出て世界チャンピオンになった日本人ボクサーがいたが、そんなことが可能になるほど、『世界』の勝ちが落ちてしまったのだ」

と、亀田家のやり方を嘆く筆者の名言。亀田3兄弟とも、日本人同士の潰し合いをせずに、世界タイトルに挑戦を果たしている。「フライ級三羽烏」といわれたファイティング原田、海老原博幸、青木勝利を取材してきた筆者には、亀田のやり方はさぞや歯がゆいに違いない。わたしも同感。

名言14・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 171ページ

ファイティング原田「俺が青木に負けたら、努力するということが意味を失う。一所懸命に練習しているボクサーが、ろくに練習しないボクサーに負けるなんてことがあったら、おかしいじゃないですか」

ポーンに敗北したファイティング原田は、フライ級からバンタム級へ転向。バンタム級にはかつての「フライ級三羽烏」のひとり、天才・青木勝利がいた。ライバルの二人は、試合前から感情を剥き出しにし、大舌戦を繰り広げる。ひとの三倍練習して強くなった原田には、練習しないでも世界レベルの強さを誇る青木勝利の存在がどうしても許せなかったのだ。そして見事3RKOで勝利! ファンにはこういう試合こそ面白い!

名言15・・・エデル・ジョフレ 『黄金のバンタムを破った男』 178ページ

ノーイメージ「最高級のテクニック、破壊的な強打、そして鉄壁のガード---ボクサーにとってもっとも大事な三つを兼ね備えたジョフレはまさに『ミスター・パーフェクト』」

この本のタイトルにもなった「黄金のバンタム」ことブラジルが生んだ不世出の名チャンピオン、エデル・ジョフレを説明した名言。ジョフレは文字通りの怪物で、過去には日本のエース矢尾板貞雄、ファイティング原田をもKOで下したジョー・メデルなど、世界の強豪をわけもなくKOで下している。

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名言16・・・エデル・ジョフレ 『黄金のバンタムを破った男』 180ページ

ノーイメージ「過去、様々な時代に様々な階級で偉大なチャンピオンが生まれたが、『黄金の○○(級)』と呼ばれたボクサーは一人もいない。それだけでもいかにジョフレが凄かったか想像ができるだろう」

「黄金のバンタム」を破った男「黄金のバンタム」を破った男』と本のタイトルにもなったエデル・ジョフォレの異名についての名言。そんな怪物王者にファイティング原田が挑もうというのだから、当時は原田が勝つと予想した者はほとんどいなかったらしい。そして、当時の日本ボクシング界のレベルの高さも物語っており、現代の名王者であるフロイド・メイウェザーJrやファン・マヌエル・マルケスなどにチャレンジできる日本人は・・・・・・皆無なのだ。

名言17・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 183ページ

ファイティング原田「原田のトレーニングと減量は人間の限界を超えていると思った。前年に行われた東京オリンピックの選手たちを取材したことがあったが、オリンピック選手も敵わないほどの激しいトレーニングだった」

“黄金のバンタム”エデル・ジョフレを迎い打つため、ファイティング原田も限界を超えた限界まで体をいじめ抜く。通常体重65kg以上からバンタム級リミットの53.5kgまで体を絞るのだ・・・・・・65kgといってもデブじゃないですから。筋骨隆々の65kgからバンタムまで絞るのは辛い、絶対。

名言18・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 196ページ

ファイティング原田「本当にジョフレというチャンピオンはすごい男だと思った。負けた瞬間、悔しさを見せずに、笑顔で自分を抱きかかえて祝福するなんて、できることじゃないよ。しかもジョフレは生まれて初めて負けたんだよ。タイトルまでも失って---。悔しくないはずないじゃないか、それなのに---。ああいう男こそ、男の中の男というのだろうな。本物のチャンピオンだよ」

“黄金のバンタム”エデル・ジョフレと15R戦い抜いたファイティング原田だから言える名言。判定は僅差でファイティング原田に上がったのだが、なんとジョフレは満面の笑みをたたえて原田を高々と抱きかかえて祝福。ジョフレは本物の男だからこそ、これだけのチャンピオンとなったのだろう。

名言19・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 253ページ

ファイティング原田「笹崎ジムのリングで会長の持つパンチングミットに原田がパンチを打ち込んでいる練習を取材している時のことだ。ある若いスポーツ記者がガムを噛みながらジムに入ってきたのだが、それをちらっと目にした原田の顔が、俄かに鬼のような形相に変わったのだ。佐藤はこの時はっきり『殺意』を感じたと言う」

“無冠の帝王”にして“ロープ際の魔術師”の異名を持つジョー・メデルとのタイトル戦前の、ファイティング原田の練習時のワンシーン。原田はこの時実に通常体重が70kg近くにまで成長しており、バンタム級リミットである53.5kgまで体重を絞るのはまさに命がけであった。そんな人の前でね、ガムなんか噛んじゃいけませんわな、そりゃあ。若い記者は殺されなかっただけラッキーかも。

名言20・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 265ページ

ファイティング原田「ちなみに原田は二十七歳で引退するまで童貞だった。もちろん健康な若い男性であるから、女性に対する憧れも欲望も人並みにある。しかし彼は『ボクサーにはセックスはマイナス』という古い信仰を持ち、現役でいる限りはそうしたものを遠ざけようと考えていた」

女にうつつを抜かして破滅するスポーツ選手は多いが、ファイティング原田は童貞でいることで、強くなること以外の欲望を絶っていた。当時の原田は、まさに修行僧同様の生活を送っていたという。これだけストイックになれなきゃ世界チャンピオンにはなれないんですな。ビバ! 童貞!

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名言21・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 300ページ

ファイティング原田「オーストラリア人がこの時の原田にいかに感銘を受けたかということを示す面白いエピソードがある。この試合の三十七後の二〇〇六年にオーストラリア競馬史上最高額の二千二百五十万豪ドルでアイルランドに所有権を移された名馬に『ハラダサン(haradasun)』という名前が付けられた。この名前の由来はファイティング原田の『原田さん』という日本の呼び名を英語表記したものだ。いかにオーストラリア人たちの間で『原田』が尊敬されているのかがわかる」

バンタム級5度目の防衛戦で敗れたファイティング原田はフェザー級に階級を変更。オーストラリア人の世界チャンピオン・ファメションに現地で挑戦するも、露骨な地元贔屓によりドローとなってしまう。しかし原田の男らしくファメションの健闘を称える姿に、フェアプレー精神が根付いているオーストラリア人の観客たちは感動。本当の勝者はファイティング原田だったと、原田のことを称えるのであった。

名言22・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 308ページ

ファイティング原田「ボクシングを始めた時から、十年やったらやめるつもりでいた。その間、二度もタイトルを取ることができた。幸福なリング生活だった。打ち込んできたリングに別れを告げるのはさびしいが、惜しまれるうちが花。ここらが潮時と思い、決心した」

ファメションとのリターンマッチに敗れたファイティング原田の、引退会見での名言。10年もの間、ただひたすらにボクシングのみに打ち込んできた男の深い言葉だ。しかし、どこか未練のある言葉にファイティング原田の試合に負けた悔しさが見てとれる。ファイティング原田こそ、男の中の男なのだ!

名言23・・・ファイティング原田 『黄金のバンタムを破った男』 310ページ

ファイティング原田「他のことはいつでもできる。でも、ボクシングは今しかできない。それに世界チャンピオンとリングで戦える人生なんて、他に比べることができないじゃないか」

自身の引退を振り返った、ファイティング原田の正真正銘の名言。青春をひとつのことに、全身全霊でかけたファイティング原田の言葉は、やはり我々の心にズシンと響くのだ。偉大なるファイティング原田に続く選手が現れることを強く祈って、ファイティング原田の名言はこれにて完!

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